銀座教会
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銀座の鐘

「天使の讃美」

説教集

更新日:2024年12月21日

2024年12月22日(日)クリスマス礼拝 銀座教会・新島教会 家庭礼拝 牧師 髙橋 潤

ルカによる福音書2章8~20節

 教会の皆様、クリスマスおめでとうございます。皆さんは、クリスマス礼拝の知らせを誰からどのようにして知らされたのでしょうか。天使に導かれてここに来たという方はおられるでしょうか。今、笑ったあなたは大変常識的な感覚をお持ちの方でしょう。しかし、私たちの常識的な感覚では、クリスマスについて記した御言葉は十分理解できないかもしれません。なぜなら、最初のクリスマスは天使が伝えたのです。天使だけが飼い葉おけに眠る主イエスのところへ案内しているからです。主イエスがお生まれになった日、飼い葉おけの主イエスのそばには母マリアそして父ヨセフがいましたが、当時の誰も、この赤ちゃんが真の救い主であることを知らなかったのです。最初の訪問者である羊飼いたちは、天使の声を聞いて、天使の言葉を心に刻んで、天使が語った通りに歩いて行って、救い主のところに導かれました。
 私たちはクリスマス礼拝が終わると、天使の導きを忘れて生活します。そして、またクリスマスが近づくと、天使の飾りをつけたり天使を見てロマンチックな思いになったりする者です。素晴らしい歌声を聞いて天使の歌声だと言って過ごしています。
 少し前に目にした記事に、天使や悪魔の存在を信じるかという質問に対するアメリカの世論調査の結果が出ていました。この調査によると半数以上が信じると回答したということです。反対に信じませんと回答した人々は、天使や悪魔は、時代遅れの中世の迷信であり、現代科学によって科学的に説明することができると考えているという結果でした。
 キリスト教会において、天使は神ではないので信仰の対象ではありません。しかし、天使の存在を無視することはできません。天使を表すエンジェルという言葉は、ヘブライ語「マラーク」のギリシャ語訳から出発し、本来は「神の影の面」を意味して、天使とか使者として理解されました。その後、天における階級、職務、地位が与えられるように発展したようです。今や天使はキリスト教世界だけでは把握することのできないほど広がり、宗教も文化も超えて多様化しています。しかし、天使の出発点は、マラーク、旧約聖書からはじまり、新約聖書においても受け継がれ生き生きと描かれているのです。
 旧約聖書で天使が最も多く登場するのはイザヤ書、ダニエル書ではないかと思います。新約聖書ではヨハネ黙示録に最も多く天使が登場します。その次にマタイ福音書とルカ福音書です。そして、聖書全体を通して確かなことは、神が天使を遣わす時というのは、特別な時代だけです。それはこの地上の崩壊期、危機的な時代、暗黒の世界だけに登場していると言えるようです。私たちが天使を通して与えられるイメージとはほど遠い、ロマンティックな時代ではなく、危機的な時代に派遣されているのです。新約聖書においても、天使の登場は最も危機的な時代であることを反映していると思われます。ですから2章9節「主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。」という言葉は、私たちは時代の危機を読み取りながら聞かなければならないのです。
 「主の天使」「主の栄光」と記されています。最初のクリスマスは、母マリアも父ヨセフも暗黒の危機的世界にいたということを天使の登場によって表現しているのです。同時にその暗黒の世界のただ中に神の声が天使によって響き出すのです。神は地上の私たちを見捨てないために、天使を遣わしたのだという、神の眼差しと神の配慮を聞き取りたいと思います。天使の声は、崩壊寸前の危機的時代のただ中に響くからです。

 天使が伝える「恐れるな!」これがクリスマスに響いた最初の言葉です。「恐れるな」という言葉は、最初のクリスマスのだけでなく、現代においても未来においても、私たちが神の国に迎えられるまで、終わりの日まで教会を通して聞き続けなければならない言葉です。クリスマスを迎えた者は、「恐れ」ないでよいということです。どうしてでしょうか。
 2024 年、私たちは恐れを抱きつつ生きているのではないでしょうか。恐れる必要のない人がいるでしょうか。現代を生きている私たちは、多くの闇をかかえています。将来に不安を抱いています。この世の闇は小さくなる気配はなく、広がっています。深まっているように思います。日に日に大きくなっているのではないでしょうか。
 2024 年 1 月は能登半島地震が起こり約 1 年が過ぎようとしています。力強い復興の槌音がいまなお聞こえてきません。私たちの闇を探せばキリがないでしょう。ロシアのウクライナへの侵略戦争、ハマスの人質事件からはじまり泥沼化しているイスラエルの過剰な攻撃、多くの国で政情不安が報道されています。報道されていない国々でも深刻な問題が続いている現代社会です。見渡す限り暗雲ただよう世界になっていくようにしか見えません。
 しかし、この現実を直視しつつ、にもかかわらず私たちは「恐れるな」と語られる天使を通して語られた神の言葉を聞くのです。なぜ、恐れないのでよいのでしょうか。聖書の御言葉に聴きたいと思います。
 恐れていた者が恐れない者に変えられる決定的な時がありました。それは「今日、あなたがたのために救い主がお生まれになったのである。」との言葉が闇の中で響き渡った時です。神は私たちをすべての恐れから解放して下さるために、御子主イエスをこの暗黒の世界に送ってくださいました。これがクリスマス、救い主の降誕です。
 クリスマスソングを聞いても心躍ることの出来ない者にも、クリスマスキャロルで踊り出せない者にも、不安から抜け出せない人にも、あなたの救い主がお生まれになったとの声が届けられています。だから、脅えつつ、恐れつつも、神の言葉を聞くのです。神なき世界から神共にいます世界へ導かれるのです。

 最初のクリスマスは、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に登録をするように命令が出されました。このような人口調査は、この世の権力者が自分の力を試すために、新しい税金を課したり徴兵をする姿勢を表すために行われます。現代においても、大国が力ずくで支配を実現するために辺り構わず徴兵や徴税を続け、武力兵力を増強しています。独断的な命令が発せらています。貧しい人々が新しい重荷を負わされます。そのような深い闇の中に、救い主がお生まれになりました。神の愛の御業、神の先手が打たれたのです。
 世界の厳しさと冷たさのただ中、救い主が地上に与えられました。ここに神のご意志が明確に示されています。地上の厳しさ冷たさのただ中に人となった神の御子は人として生きてくださいました。それが主イエス・キリストです。神の愛と救いのご計画は、この世の力ずくで支配する力によるのではありません。神のご計画は神の愛によって私たちを包むご支配です。本当の意味で権力を持っているのはこの世の権力者ではなく、救い主なる神であられるのです。人間は権力を得ようとしますが本当の権力を持つことは出来ないのです。だから恐れることはないのです。
 「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。11 今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。」
「いと高きところには栄光、神にあれ、 地には平和、御心に適う人にあれ。」

 真の神の光に照らされて、闇は闇の力を失います。この地上に真の平和を与えるお方こそ神なのです。そのことが明らかにされたのが、主イエス・キリストの降誕です。私たちの目にはこの世の闇しか目に入らないかもしれません。しかし、この世界は主イエスの誕生によって神の愛のご支配、神の平和に囲まれているということが知らされているのです。
 私たち一人一人、どんな暗闇をかかえているでしょうか。私たちの闇を誰よりもよくご存じの主なる神が天使を遣わし、讃美の声を響かせているのです。私たちがどんなにもがいてもどうにもならない、ただただ崩壊している中で、暗闇に響く天使の声、天使の賛美を聞く事に意味があるのです。
 クリスマスに登場する天使は、ルカによる福音書1章26節に記されているように、神が遣わした天使の名前はガブリエルです。ガブリエルは真理の天使として、旧約聖書では預言者ダニエルの幻を説明し、受胎告知、キリストの復活、そして人間の死に際して責任をもつように派遣された天使です。
 暗黒の時代、闇の中に遣わされた天使の言葉と讃美を通して、神の救いのご計画が進められました。私たちが天使の讃美に声を合わせることは、闇から光へ、暗黒から栄光へ、絶望から希望へ、私たちを愛された神の御前に進み出る日なのです。
 クリスマス、主なる神の深い憐れみと救いのご計画が開始されたことを覚え、心よりお祝い申し上げます。