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銀座の鐘

芽生え、育って実を結ぶ

説教集

更新日:2021年07月04日

2021年7月4日(日)聖霊降臨後第6主日 主日礼拝  家庭礼拝 牧師 髙橋 潤

マルコによる福音書4章1~9節

 主イエスが湖のほとりで教えておられた時、「おびただしい群衆」が主イエスの周 りに集まってきました。主イエスは、陸から少し離れ、舟に乗って湖の上から湖畔にいる群衆に向かって教えておられます。
主イエスは「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」(マルコ1:15)と語り、ガリラヤ湖周辺、カファルナウム、ガリラヤ中の会堂に行き宣教と愛の業を行いました。主イエスのよって御言葉が語られ、御言葉を聞いた人々の中で愛の御業が実現しました。最初は、御言葉が語られ、4人の漁師が主イエスに従いました。汚れた霊に取り憑かれた男から汚れた霊が追い出されました。多くの病人が癒やされました。多くの人々から悪霊が追い出され、重い皮膚病を患っている人が清められました。中風の人がいやされました。罪人の仲間とされていた徴税人レビが立ち上がり主イエスに従いました。手の萎えた人がいやされました。そして、主イエスは12人を選び、弟子にしました。これらの愛の業は、主イエスの教えと連動していました。主イエスの愛の業によって主に従い癒やされた人々は、彼らが立派だったとか努力したとか評価されたからとは一切書かれていません。主イエスの一方的な憐れみと恵みによって奇跡が起こったとしかいいようがありません。まさに徹頭徹尾、神の御業が行われ、神の国が近づいてきているのです。
 主イエスの教えと愛の業が続いた時、主イエスは律法学者たちから言いがかりをつ けられます。例えば、主イエスが多くの人の中から悪霊を追い出すことが出来るのは、主イエスが悪霊の親分だからだという言いがかりを受けました。妬まれました。とうとう主イエスを殺害する計画が練られるようになりました。
 このような流れの中で、主イエスの宣教の言葉は、ふんだんに宣べ伝えられていま すが、具体的な教えの内容についてはこれまでほとんど記されていません。
 本日与えられた聖書箇所4章1節以下は、主イエスのたとえ話しによって教えの内容が語られています。これまでの愛の業が実現する力の源がこの教えから少し見えてきます。
 5章以下では、「レギオン、大勢」という名の悪霊たちが2千匹の豚の中に逃げ込み、豚共々溺れ死んだ出来事が記されています。悪霊に満ち溢れた世界において、主 イエスが悪霊と戦い、御言葉を一人でも多くの人々に語っている姿が浮き彫りにされ ています。6章では、主イエスの御言葉を聞く五千人の人々に食べ物を与える奇跡が 記されています。このような1章から6章までを見ながら、主イエスの種まきのたとえをお聞きしたいと思います。
 主イエスは、私たちが生きる世界において、私たちがどれだけ悪霊に囲まれている かを見て、知っているのではないでしょうか。私たちは全く気付くこともないような 悪霊の世界を主イエスは受け止め、憐れみ、その中で孤軍奮闘してくださる主イエス のお姿が聖書に記されているのです。悪霊との戦いのただ中で、9節「聞く耳のある者は聞きなさい」といわれています。主イエスが悪霊と対決して、悪霊から私たちを 救い出しながら、切実な招きの言葉が語られているのです。
 主イエスの目には、悪霊の仕業が見えるのです。ゆえに、道ばたに落ちた種を鳥が 食べてしまう姿、石だらけで土の少ないところに落ちた種が芽を出しても育つことが 出来ず枯れてしまった姿、茨の中に落ちた種が実を結べなかった現実を知っているの です。これらは、主イエスが見ておられた私たちの現実なのです。
 しかし、主イエスの目には、悪霊だけが見えているのではありません。主イエスが お語りになったのは、悪霊の仕業だけでなく、良い土地について語られました。これ まで、多くの人々を招き、癒やしたように良い土地が与えられることを見ているので す。決して、悪霊の仕業に降参しているのではなく、悪霊に勝利した主イエスがおび ただしい群衆を前にして福音を語っているのです。そして、この福音は神の国が近づ いたことを示し、良い土地に落ちた種が芽生え、育ち、実を結ぶ、驚くべき御業が始 まっていることに目を向けさせているのです。主イエスが語られた御言葉は、30倍、 60倍、100倍もの実りを生み出すという、悪霊の支配の終わりを告げ知らせるほ どの迫力をもって神の国の到来を語る喜びの宣言として種まきのたとえを聞くことが出来るのです。主イエスが4章の後半で、このたとえは神の国の秘密が打ち明けられ ていると語られた秘密こそ神の御支配なのです。
 神の国の秘密、神の支配とは何でしょうか。それは、種すなわち御言葉と御言葉を 聞く私たちのことではないでしょうか。御言葉が私たちと一体となる時、私たちの内 において、神のみ力によって芽生え、育ち、実を結ぶのです。御言葉は、不思議な仕 方で私たちの内なる力として、芽生えさせ、育てて、実を結ばせてくださるのです。
 農夫がふんだんに種を蒔くように、主イエスが方々で御言葉を語ります。この御言 葉が驚くべき力を発揮するのです。農夫が大地を耕し、水を注ぎ、肥料を与え、芽生 えを喜び、成長を喜び、手入れをして育てるように、私たちの心に語りかけ、御言葉 を与え続け、サタンに御言葉が奪われないように、艱難や迫害で躓かないように、思 い煩いや欲望に支配されないように御言葉を語り愛の業を実践してくださるのです。
私たちが御言葉を聞き、私たちの内に蒔かれた御言葉は神の国が近づいたことを知らせ、神の御前に立ち、悔い改めへと導くのです。
 神の国の秘密は、さらに神によってこの地上に主イエスという種が蒔かれたことが 隠されているのです。悪霊に満ちた世界、罪にまみれた世界に主イエスが遣わされま した。誰の目から見ても地球にたった一人御子イエス・キリストが遣わされても、焼 け石に水、意味がないと思うでしょう。しかし、そうではなかったのです。この地上 に神の御子が遣わされたことによって、良い地が与えられ、神の国が芽生え、育ち、 実を結ぶことが実現したのです。隠された秘密が明かされ始めたのです。神の御子が 悪霊と罪に支配されているとしか思えない現実の中で、力関係が逆転する出来事が繰 り返され続け、福音によって神の国が近づいたことが夜明けの光を見るように明らか にされ始めたのです。これまで、神の御支配は隠されていました。しかし、土に埋ま ってしまうように目に見えない御言葉が神の圧倒的な力によって、悪霊を追い出し、 勝利を続けているのです。ゆえに「聞く耳のある者は聞きなさい」と語られるのです。
 たった一人、主イエス・キリストが地上に遣わされて世界が変えられました。キリスト以前とキリスト以後では、全く違う世界に変えられたと言えないでしょうか。キリスト以前、救い主を待望していても、この地上は、特別な人間が支配していると疑 わない神が見えない世界でした。苦難、迫害、世の思い煩い、富の誘惑、欲望によっ て神が見えない、御言葉を受け入れられない世界でした。神の御言葉が芽生え、育ち、 実を結ぶことを主イエスによって現実に見ることが出来たのです。
 ジョン・ウェスレーは、世界は我が教区と語りました。世界に福音が告げ知らされ る信仰の確信が与えられたのです。ウェスレーは自分の力で完成させるという夢を見 ていたのでもないし、大風呂敷を広げたのでもありません。そうではなく、神の勝利 を確信していたのです。だからこそ、世界が癒やされ神の恵みの御支配によって、悪 霊支配ではなく愛の業を見る「我が教区」であると信仰によって明日を見ているので す。私たちは、自分自身を見つめるとき、悪霊の支配しか見えない弱く愚かな者です。 しかし、主イエスの教えと愛の業を通して、御言葉は成長して根を張ることを確信するのです。悪霊に対する主イエスの勝利宣言を聞くのです。
 主の祈りは、「われらを試みにあわせず、悪より救い出したまえ」と主イエスと共 に祈ります。人生は常に試練の連続です。いつも試練の中に進んで行きます。この祈 りを毎日祈らないわけにはいかないのです。私たちはこの祈りを祈るたびに、この試 練は「われらを」と祈るのですから私だけが試練に遭遇しているのではないことを弁 えなければなりません。試練に勝利した主イエスが荒れ野の誘惑によって勝利のお姿 を示してくださいました。神の国、神の御支配によって悪から救い出していただく道 が与えられています。「悪魔をご自分の死によって滅ぼし」(ヘブライ2:14)と あるように、神の国が近い、神の国が到来したことを希望の光として与えられているのです。御言葉の力に感謝して祈りましょう。
 天の父なる神さま。悪霊の支配に見える世界に主イエス・キリストが神の支配を現し、御言葉の種が芽生え、育ち、実を結ぶ恵みを感謝いたします。神の御支配を見つめつつ、 神の国を見るまなざしをお与えください。主イエスの御名によって祈ります。